(5)品質との関係による9つの価格戦略

2010-10-25

(5)品質との関係による9つの価格戦略~大切なのは、品質と価格のバランス~

仕入れ原価は安いほど良い、販売価格は高いほどよいのは言うまでもありません。しかし、一般に仕入原価が多少高くなっても、商品の品質や見栄えを良くした方が高く売れます。それを決める際に大切なのは、客層、客数です。富裕層が多ければ、高価格品の販売が可能です。客数が多ければ、大量販売が可能です。また、バリュー志向のお客さんが多いのであれば、割高な商品を売ることはできません。

ソーダーなどの清涼飲料水であれば、値段は通常100円前後、高くても1,000円もしないでしょう。しかし、例えば、化粧品の場合、1本100円から数万円まで、その価格帯は非常に広くなっています。それだけに価格戦略が重要です。価格戦略というと直ぐに「低価格戦略」と「高価格戦略」を頭に浮かべます。「低価格戦略」や「高価格戦略」というと値段そのものに関心がいきがちですが、本当に重要なのは品質との関係です。つまり、大切なのは品質を基準にした相対的な価格なのです。例えば、「良い物を安く」という戦略と「安かろう悪かろう」という戦略では、同じ「低価格戦略」といっても全く違う経営戦略なのです。

価格と品質の関係に注目すると、価格戦略は次の9つに分類できます。

○価格が高い場合-3種類の高価格戦略

  高い品質の商材を提供する戦略は「プレミアム戦略」
  中程度の品質の商材を提供する戦略は「オーバーチャージー戦略」
  低い品質の商材を提供する戦略は「ぼろ儲け戦略」

○価格が中ぐらいの場合-3種類の中価格戦略

  高い品質の商材を提供する戦略は「高価値戦略」
  中程度の品質の商材を提供する戦略は「中価値戦略」
  低い品質の商材を提供する戦略は「偽の経済性戦略」

○価格が低い場合-3種類の低価格戦略
  高い品質の商材を提供する戦略は「スーパーバリュー戦略」
  中程度の品質の商材を提供する戦略は「グッドバリュー戦略」
  低い品質の商材を提供する戦略は「エコノミー戦略」

こうして分類すると、「プレミアム戦略」と「中価値戦略」及び「エコノミー戦略」の3つの戦略は、どれも品質と価格のバランスがとれているので相対的には公正価格(フェア価格)戦略のグループに整理されます。

一方、「高価値戦略」と「グッドバリュー戦略」及び「スーパーバリュー戦略」の3つの戦略は全て品質に比べて価格を割安に設定することから割安価格(バリュー価格)戦略のグループに整理されます。中でも、「スーパーバリュー戦略」は超割安価格戦略といえましょう。

他方、「オーバーチャージー戦略」と「偽の経済性戦略」及び「ぼろ儲け戦略」の3つの戦略は全て品質に比べて価格を割高に設定することから割高価格戦略のグループに整理されます。中でも、「ぼろ儲け戦略」は超割高価格戦略といえましょう。

品質

ぼろ儲け戦略 オーバーチャージー戦略 プレミアム戦略
偽の経済性戦略 中価値戦略 高価値戦略
エコノミー戦略 グッドバリュー戦略 スーパーバリュー戦略

バリュー価格戦略のグループ:
   「高価値戦略」、「グッドバリュー戦略」、「スーパーバリュー戦略」

フェアー価格戦略のグループ:
    「プレミアム戦略」、「中価値戦略」、「エコノミー戦略」

割高価格戦略のグループ:
    「オーバーチャージー戦略」、「偽の経済性戦略」、「ぼろ儲け戦略」

同じことを消費者からみると、次のようになります。

 

(知覚)品質

価格 詐欺・ぼったくり 高(たかっ!) 納得
やられた 納得 お買い得
納得 バーゲン 超お買い得

こういう観点から眺め直すと、低い品質の商材を低い価格で提供する「エコノミー戦略」は確かにロープライスですが、購入者に割安感を与えておりません。いわゆるお買い得感がないのです。

一方、高い品質の商材を中くらいの価格で提供する「高価値戦略」は決してロープライスで提供しているとはいえませんが、購入者に割安感を与えることができます。

短期的には割高価格戦略がもうかりますが、長期的にはバリュー価格戦略がもうかるといわれております。

また、どのグループの価格戦略を採用するかは、取引が1回だけの取引か継続的な取引かによっても決まります。或いは企業活動が小規模か大規模かによっても決まります。

もちろん、1回だけの取引であれば割高価格戦略がもうかります。タイなどアジアのマーケットに行くと、だまされて高い買い物をさせられることがあります。後で同じようなものが安く売っていることが分かって失敗したと気付くわけですが、後の祭りです。マーケットの商人からすると、後先のことは考えず、兎に角少しでも高く売ることが大切なのです。

国内でも安心できません。悪徳商法が後を絶ちません。最近、話題になったのが「血液サラサラ商法」です。「腕にはめるだけで血液がサラサラになる」などと勧誘し、ブレスレットなどを売る詐欺的商法です。客の血液を顕微鏡でのぞかせて、「使用前・使用後」の“効果”を強調して販売していました。実際にブレスレットを装着した後には血液がサラサラになったように見えるそうです。この詐欺的商法の関係者が逮捕された後、テレビで種明かしをしていましたが、2枚のガラス板に血液を挟み、強く押しつけて顕微鏡で見るとサラサラに見えるそうです。

神奈川県警の幹部が関与している疑いで有名になった「霊感商法」も詐欺商法の一つです。

こうした詐欺商法は、もっての他です。しかし、詐欺商法でなくても、割高価格戦略は、継続的な取引となると、信用を失ってしまいますので、やがて売り上げが減少し、利益が出せなくなってしまいます。

また、企業活動が小規模であれば、ある程度の人数を騙せば利益を出すことも可能でしょうが、大規模であれば、かなり多くの人数を騙さなくてはなりません。「一人の人間を長くだますことや多くの人間を短い間だけだますことは出来ても、多くの人間を長くだますことは出来ない」という名言がありますが、そのとおりです。したがって、大企業では割高価格戦略は現実的ではありません。

実際、世の中のエクセレントカンパニーには、「グッドバリュー戦略」か「高価値戦略」を選択している会社が多いようです。例えば、外国の企業としては、サウスウェストやタコベルが「グッドバリュー戦略」で有名です。

国内の企業としては、ユニクロ(株式会社 ファーストリテイリング)の「グッドバリュー戦略」が有名です。ユニクロといえば、1998年頃から爆発的に売れたフリース(ポリエステルで作られた柔らかい起毛仕上げの繊維素材)が有名ですが、当時、海外のブラントでは10,000円以上で売られていたものを、なんとユニクロでは1,900円で売り出したのです。お陰で1998年には200万枚、翌99年には850万枚、更に2000年には2,600万枚も売れたそうです。

(3つの客層)

一方、多くの企業がとっているのが、フェアー価格戦略です。フェアー価格戦略にも、価格帯により「プレミアム戦略」、「中価値戦略」、「エコノミー戦略」の3つがあります。実は、消費者も3つのタイプに分けることができるのです。

3つのタイプとは、「価格重視型」、「バランス型」、「品質重視型」です。「価格重視型」は、品質は多少劣っても価格を重視するタイプです。比較的低所得者層に多いタイプです。このタイプは、そもそも品質にそれほどの差があるはずがないという考えも持っている人が多いようです。このタイプに対しては、多少品質を落としてでも安い価格で提供することが有効です。

一方、「品質重視型」は、価格は多少高くても品質を重視するタイプです。比較的富裕層に多いタイプです。このタイプに対しては、多少価格を上げても良い品質の商品を提供することが有効です。

「バランス型」は、両者の中間で、品質と価格のバランスを重んじるタイプで、中間所得層に多いタイプです。

これまでは、このタイプをターゲットにすることが多かったので、フェアー価格戦略の中の「中価値戦略」を採る企業が多かったのです。

しかし、長引く不況の結果、「バランス型」から「価格重視型」にシフトする消費者が増えてきたので、一時「エコノミー戦略」を採る企業が増えたのです。

更に最近では、所得の2極化が進んだ結果、「品質重視型」をターゲットとした「プレミアム戦略」をとる企業が増えています。

ポイントは、消費者は3つのタイプに分けられるのですが、その比率は景気などによって変化するということです。どれかを選ぶ際には、その動きを見極めて戦略を選択しなければ、大変なこととなります。リスクを避けるのであれば、「価格重視型」、「バランス型」、「品質重視型」の3つの商品を用意しておく、つまり、「プレミアム戦略」、「中価値戦略」、「エコノミー戦略」の3つを併用すると良いでしょう。

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