(2)販売促進型価格

2010-10-25

販売促進のために、一時的に価格を下げて売る場合も少なくありません。特売(セール)が典型的です。販売促進型価格は、正価自体は据え置くので、価格の引き下げとは異なります。

①目玉商品的価格設定
スーパー・マーケットやデパートなど小売り店舗で特売品として特別に安い価格設定をすることがあります。
例えば、「玉子LLサイズ10個入り88円!」といった具合です。
場合よっては、原価割れしているのではないかという程に価格が低く設定されていることがあります。このように価格設定された商品は、ロス・リーダーと呼ばれます。ある商品の仕入れ原価を割って(ロスを出して)も、他の商品の販売に誘導する(つなげる)というリーダー的役割が期待されているからです。
頻繁にロス・リーダーとされる商品として、牛乳・卵などの日配品やティッシュペーパー・トイレットペーパー・サラダ油・しょう油・味噌などの保存が効く商品があります。日配品であれば、必ず需要があるので、目玉商品になりやすいのです。一方、保存が効く商品であれば、消費者は買い溜めしておくことができ、売り手もまとめて購入することができます。
「目玉商品」をおとりとして使うこともあります。つまり、「目玉商品」を目当てに来た客に対して、別の商品を売るのです。例えば、旧型のパソコンに特別安い価格を設定しておいて、そのパソコンを買いに来た消費者に対して、最新の機能が着いているが価格も高いパソコンを売るといった場合です。別の商品の良さを上手く消費者にアピールして説得するのであれば問題ありませんが、広告商品等に関する難点をことさら指摘することは、違法だそうです。もろろん、限定数量も記載しないで売り切れ扱いするのは、明らかに違法な行為となります(いわゆる「おとり広告」)。

②特別催事価格設定
特定の季節や時期に価格を引き下げる方法です。年末セールや優勝セールなどがあります。
昨年のプロ野球・セ・リーグは、10月2日に巨人の優勝が決まりました。すると、翌3日から全国各地のデパートやスーパーが優勝セールを始めました。また、「セブンーイレブン」や「イトーヨーカドー」も、優勝セールを行い、セブンーイレブンでは全国約1万1,800店舗で「おにぎり100円セール」を、「イトーヨーカドー」ではほぼ全国の店舗で野菜や果物・鮮魚の「88円均一セール」を実施しました。更に、家電量販店のビックカメラでも、首都圏18店舗で優勝セールを実施し、数量限定の特別価格商品を用意したそうです。
企業にとってみれば、理由なく通常の価格設定を大幅に、しかも頻繁に変更すれば、顧客が日常の価格設定について信用をおいてくれなくなる可能性があります。そのため大規模な値引きセールは、それを行う理由を顧客に納得してもらうことが重要となります。
その点、国民的スポーツであるプロ野球の優勝チーム決定は大幅値引きのきっかけとしては申し分ないということでしょう。要はプロ野球に限らず、注目の集まっている時期に大幅値引きセールは、集客的にも、利益的にも企業にとって「吉」ということです。
それにしても、最近は、「何故この会社がこのチームの優勝セールをするの?」と疑問に思うケースもあります。ただ、一人の消費者としては、いろいろな企業が優勝セールを実施してくれるのはありがたいものです。

③キャッシュバック
最近、よく目にするようになったものがキャッシュバック(現金還元)方式です。
目玉商品的価格設定や特別催事価格設定は価格自体を下げるために、ブランドイメージを損なうなどの危険があるため、メーカー側は好みません。しかし、キャッシュバックであれば、価格自体を下げるのではないので、目玉商品的価格設定や特別催事価格設定よりブランドイメージを確保できるので、メーカー側が好む方法です。実際、米国の自動車メーカーなどではキャッシュバック方式が販売促進ツールとして多用されました。
キャッシュバックは携帯電話のソフトバンクでも活用しています。具体的には、昨年10月12日から1月15日までの「“ホワイトプランのワ”ひろげようソフトバンクご紹介キャンペーン」でキャッシュバックを活用しました。このキャンペーンは、期間中にソフトバンク携帯電話の利用者から紹介を受けて、ホワイトプラン(基本使用料月額980円(税込み)で、午前1時から午後9時までソフトバンク携帯同士の国内通話料が無料となる料金プラン)で新規に契約すると、紹介者、被紹介者の双方にそれぞれ5,000円をキャッシュバックするものです。このキャンペーンは好評につき、4月30日まで期限が延長されました。
直接値引きするのではないという点では、「ヤマダ電機」や「ビッグカメラ」といった家電量販店などで導入されている「ポイント還元制度」も同様の効果が期待できます。

④その他
直接値引きするのではありませんが、買い易くする方法としては、低金利でのローンや分割払いの提供があります。ボーナス時一括払いも同様の効果があります。最近の日本では超低金利が続いているため、低金利でのローンはあまり効果がありませんが、高金利時代の米国では非常に有効な手段でした。

(値頃感とインパクト)
販売促進を成功させるためには、値頃感を引き下げることなく、お得感を強烈に印象付けることが大切です。値頃感を引き下げてしまっては、通常価格に戻した場合に、販売数量が大きく落ち込んでしまうからです。
そのための工夫としては、例えば、靴屋の量販店で行われている販促手法に「3足買うと3足目は無料」という方法があります。これは、アメリカではかなり前から色々な商材で利用されていたテクニックですが、この方法であれば、どれ位の割引かはピンと来ない一方で、無料というとインパクトがあります。しかも、販売店からすれば、1足買う予定の消費者だった場合、2倍の金額の購入をしてもらうことになるので、かなりの売上増加が期待できます。
値頃感を引き下げることなく、お得感を強烈に印象付ける方法として、タイムセールスがあります。例えば、スーパーのお惣菜コーナーで閉店時間が迫る頃、100円引きセールや半額セールが実施されることがありますが、これもタイムセールです。これなら消費者も安くなる理由が明確なので安心して購入できますし、昼間の通常価格を高いとはあまり感じないはずです。

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