(1)本体と消耗品

2010-10-25

商品ミックスの値付けの方法として、有名なものは本体と消耗品の値付けです。よく利用されているのは、本体価格を安く設定する一方で、消耗品の価格を高くする値付けの仕方です。
具体例としては、パソコンのプリンターとインクの関係が上げられます。私が使っているプリンターは3年ほど前に1万円程度で購入しました。年末の特売とはいえ、この精密機械が1万円で利益が出るとは思えません。一方、このプリンターに適合するインクは、黒色・カラーとも1,575円です。両方買うと3,150円です。こちらは非常に割高な感じを受けますが、このプリンターを使う限り止むを得ません。これまでに10回は買い換えていますから、インク代だけで3万円以上支払っています。
最近の事例としては、エプソンの多機能プリンター(PX-A620)の本体が、家電量販店のコジマでは8,400円で販売されていました。この機械は、コピー・プリンター・スキャナの1台3役の機能を持った優れものです。ちなみに、このプリンターのインクカートリッジは、カラー(4色)が3,500円、黒が約1,000円です。なんと、本体価格は、インクカートリッジ2セット分の価格にも満たないわけです。
実は、大型コピー機も同じような価格戦略を採っています。コピー機の価格は非常に安く抑える一方、保守料を高めに設定することで、全体として必要な利益額を確保しているのです。
文具用品としては、ラベルライターもこの戦略です。ラベルライターといってもピンと来ない方もいるかもしれませんが、「テプラ」と言えば、お分かりでしょうか。実はテプラはキングジムの商品名です。このテプラも本体は、安いものなら7,000円位で購入することができます(SR40という機種の価格は7,140円)。一方、テープ(ラベル)は1本1,050円です。
また、髭剃り用カミソリと替え刃の例もこの価格戦略を採っています。T字型替刃式の安全カミソリと言えば、米国ジレット社が有名ですが、ジレット社は、安全カミソリ(本体)をただ同然の安値で提供する戦略を採りました。これにより、ジレット社は、安全カミソリ市場で多くのシェアを獲得しました。本体を購入した客は、必然的に替え刃を購入します。こうして、ジレット社が顧客の囲い込みに成功して、安定的な利益体質の確立に成功したのです。
電動カミソリもやはり、同様の戦略をとっていると思います。替え刃が非常に高いですよね。電動カミソリのメーカーの中には、電動ハブラシも製造しているところもありますが、やはり、電動ハブラシも同じビジネスモデルで、替えブラシの値段が高めになっています。例えば、「インタープラーク」という電動ハブラシの場合、本体価格が9,975円で、スペアブラシは1,260円という価格設定になっています。ブラシ交換は3ヶ月が目処ということですので、約2年でスペアブラシに支払うお金が本体価格と同じ位になります。
携帯電話(本体)と充電池の関係も似たようなものです。携帯電話の場合、販売奨励金のため、本体価格が非常に安く据え置かれているため、充電池の割高感が強くなります。私も一去年、携帯電話を買い換えました。実は、携帯電話自体は問題がなかったのですが、充電池が寿命らしく直ぐにバッテリー切れになってきたのです。携帯ショップに値段を尋ねると、充電池の値段が非常に高く、新しく携帯電話を購入した方が安い(当時は0円で売られている機種も多かったのです。)ので、買い換えることにしたのです。

(おとり値付け)
このようにメインとなる商材の価格を安くして、付随して消費する商材の価格を高くする値付けの方法を、米国では、「キャプティブプライシング」といいます。キャプティブとは、「おとり」「捕虜」という意味です。
米国のラスベガスでは、カジノのホテルの宿泊料金が驚くほど安く設定されています。ホテル側としては、ホテルの宿泊では利益が出せなくても、カジノでお金を落としていただければよいという思惑でしょう。実際、高級ホテルに安くとまることができても、カジノで大損すれば、「おとり」に引っかかったということにもなりますので、十分にご注意下さい。

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