(5)プライス・ライニング戦略(松竹梅戦略)

2010-10-25

プライス・ライニング戦略とは、プライスライン(価格線)を意識した価格戦略のことです。複数の価格の商品がある場合、上限から下限の価格範囲をプライスゾーン(例えば、3,000円から10,000円)といい、そのゾーンのなかでの価格をプライスライン(例えば、3,000円、5,000円、10,000円)といいます。プライス・ライニング戦略とは、このゾーンの幅やラインの数を意識した価格戦略をいいます。
典型的なプライス・ライニング戦略では、商品のラインを普及品・中級品・高級品の3つに分け、価格も3つに集約します。「松」「竹」「梅」と3種類の価格の商品を用意することは、昔から寿司屋やうなぎ屋などでよくとられていた手法です。
企業側としては、高い価格の商品群を設定することで、普及品の安さをアピールしたり、逆に、安い価格の商品群も提供することで、高い価格の商品の高級感を印象付けることができます。
一方、消費者側としても、いくつかの価格にランクが分かれていると、選択がしやすいというメリットもあります。

(挟み込み戦略)
プライス・ライニング戦略を上手く利用して、ライバルからの価格競争を回避できた例を紹介します。
米国のウォッカ(お酒)の例です。米国にはヒューブライン社が販売しているスミノフという有名なブランドのウォッカがあります。あるときライバル企業が同等品を1ドル安い価格に設定したのです。これに対して、ヒューブライン社は、何とスミノフを1ドル値上げしたのです。ただし、ヒューブライン社は、値上げしただけではありません。同時に2つのブランドを市場に出したのです。スミノフの元の価格で「レルスカ」ブランドのウォッカを出し、ライバルのウォッカの価格以下で「ポポフ」ブランドのウォッカを市場に投入したのです。
これにより、ライバルのウォッカを挟み討ちにしつつ、スミノフのブランド価値の向上にも成功したのです。

(プレミアムプライシング)
プライス・ライニング戦略で一般的な価格より高い価格の商品を付けることを「プレミアムプライシング」といいます。値段だけ高いということは通常ありえないので、スタンダード商品より品質が良いプレミアム商品・高級品ということになります。
所得の2極化現象や景気の回復に伴い、「品質重視型」の消費者が増えていると見られ、「プレミアム戦略」をとる企業が増えているようです。
サントリービールの「ザ・プレミアム・モルツ」は文字通り、プレミアムプライシングの典型的な例ですね。サッポロビールの場合だと、黒ラベルがスタンダード商品で、エビスビールがプレミアム商品となります。アサヒビールではプライムタイムがプレミアム商品で、キリンビールでは、ニッポンプレミアムがプレミアム商品といえるでしょう。
飛行機の国内線でもプレミアムプライシングが過熱化しています。
ANAは2004年12月からそれまでの「スーパーシート」を一層高級化した「スーパーシートプレミアム」を導入し、プラス5,000円の料金で、より上質なサービスを受けられるようになりました。更に、2008年4月からは「プレミアムクラス」にグレードアップされ、価格も普通運賃より5,000円高い現在のスーパーシートプレミアムより更に1,000円~2,000円程度高くなる予定です。プレミアムクラスでは、前後の座席間隔を現行の約97センチから約127センチに拡大すると共に、朝、昼、夕食の時間帯以外にも軽食を用意し、1日中機内食を楽しめるようになります。
私も、少し前に「スーパーシートプレミアム」を経験しました。私の場合、追加料金を払ったのではなく、オーバーブッキングのため、無料でアップグレードされただけです。沖縄・那覇空港までの長いフライトでしたが、「スーパーシートプレミアム」のお陰で本当に快適な空の旅となりました。お金に不自由していない人なら必ず利用するだろうと確信しました。
一方、JALも2007年12月1日より「国内線ファーストクラス」のサービスを開始しました。これは、従来あった「クラスJ」(プラス1,000円で、普通席より広いシートに座り快適にくつろげるというサービス)の上に追加されるものです。「ファーストクラス」は、8,000円の追加料金で、ゆったりとした快適なシート、どの時間帯でも利用できる機内食、専用チェックインカウンター、空港ラウンジの利用、優先搭乗、手荷物の優先引渡しなど、プレミアムなサービスを受けられるようになりました。
プレミアムプライシングの例としては、ホテルのススイート・ルームもあげられます。ザ・リッツ・カールトン東京の場合、最上級の客室「ザ・リッツ・カールトン スイート」は何と一泊210万円もするそうです。しかも、サービス料・宿泊税は別途の料金です。

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