(1)経時的価格戦略 ①上澄み吸収価格戦略
①上澄み吸収価格戦略
上澄み吸収価格戦略(スキミング・プライシング)は、初期高価格戦略といわれるもので、新製品を発売する際、通常考えられる価格より高い価格に設定する戦略です。価格を高く設定することにより、1製品当たりの利益を大きくすることができます。また、価格を高く設定することにより、製品や会社自身のブランドを高く保つことができます。生産能力に限界がある場合や価格に敏感でない場合などは、初期段階の価格を高く設定することで、利益を確保して、製品開発費や広告宣伝費など商品導入段階における費用を早期に回収することができます。そして、売り上げが低下し始めた段階や商品の新規性が薄れた段階などで価格を徐々に引き下げていきます。
例えば、発売当初は高級志向・本物志向の顧客をターゲットに高い価格設定により、高いプレステージを維持して早期投資回収を図ることを優先させます。その後、ライバル企業が参入してくると、段階的に価格引き下げを行っていきます。
上澄み吸収価格戦略が有効な場合とは、次のような場合です。
まず、新規参入が困難な場合です。例えば、原材料や部品が入手困難でのライバルの参入は考え難いといった場合は、上澄み吸収価格戦略が有効です。生産設備の設置が大変なのでライバルの参入は考え難い場合も、上澄み吸収価格戦略が有効です。あるいは、特別な製造技術を必要とする場合や特許などで参入障壁がある場合も、上澄み吸収価格戦略が有効です。
また、新商品のお客が価格に対して敏感でない場合(需要の価格弾力性が比較的低い場合)も、浸透価格戦略が有効です。何故なら、お客が価格に対して敏感でない場合、値段を高く設定しても売上数量がそれほど落ちませんので、利益を大幅に伸ばすことができるからです。
上澄み吸収価格戦略の例としては、映画が有名です。映画はまず、ロードショーで観て貰い、機内映画や有料放送で流し、地上波テレビで流します。地上波テレビで流す前後に、レンタル用DVDを発売し、その後で、セル(販売)用のDVDを販売します。
書籍の場合も、先ずは単行本で販売して、暫くして文庫本にして発売します。
上澄み吸収価格戦略は、時間の経過とともに価格を下げていくことから、「経時ディスカウンティング」戦略と呼ばれることもあります。
結果的に上澄み吸収価格戦略となっているものに、携帯電話やパソコンがあります。携帯電話やパソコンは、次々とニューモデルが発売されています。ニューモデルの発売当初は、高めの店頭価格で販売されていますが、徐々に価格が下がっていきます。そして、次のモデルが発売されると旧型モデルということでかなりのディスカウントで販売されるようになります。
例えば、NECの「LaVie L LL800/KG」というノートパソコンは、2007年9月13日発売になりました。このパソコンは、オープン価格制で定価はありませんが、東京都の家電量販店では、発売当初は約19万円で販売されていました。それが、3か月後の12月には130,800円で売られるようになり、約6万円も値下がりしています。同じ2007年秋モデルの富士通の「FMV-BIBLO NF70X」の場合、12月には発売当初より61,000円安い128,000円で販売されるようになりました。
(上澄吸収価格戦略は差別価格戦略の一種)
上澄み吸収価格戦略は、同じもの(または同様な商材)を、別の価格で販売するので、一種の差別価格戦略といえます。ただし、時間差を考えて、段階的に導入するところが特徴です。
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