(2)地域的価格戦略

2010-11-01

(2)地域的価格戦略
空間軸での戦略的な価格戦略としては、戦略的値下げがあります。
これは、まず低価格戦略でライバルを徹底的にたたいておいて、ライバルが市場から退出したところで値上げをするという戦略です。
我々が痛い思いをした事例に、サンキスト・レモンの戦略的値下げがあります。
(サンキスト・レモンの略奪的価格設定)
私の故郷は、瀬戸内海の中島という島です。中島でも以前はレモンを作っていました。糖度は、サンキスト産が8.2に対して、中島産が9.4、香りもサンキスト産より中島産の方が優れていました。
そこにサンキストは価格戦争を仕掛けてきたのです。輸入レモンを、国産レモンの半額から3分の1程度の価格に値付けしたのです。これほどの価格差があると、味や香りに優れた中島産レモンも勝ち目はありません。止むを得なく、レモン栽培から撤退して、レモンの木も伐採しました。すると、途端に価格を上げてきたのです。レモンの木を育てるのには時間がかかります。しかも、レモンの果実が販売できるようになると再び低価格戦略を採られるかもしれないと思うと、レモン栽培に手を出す気にはなれません。こうして、サンキスト・レモンは、この世の春を謳歌(おうか)したのです。
悔しいですが、価格戦略としては見事なものでした。このように優位にある企業が劣位の企業を市場から追い出す目的をもって製造コストを下回る極端に低い価格を設定する行為(「略奪的価格設定」)は、不当廉売(ダンピング)であり、米国では禁止されています。
なお、幸いなことに近年は、少しくらい値段が高くても、美味しくて安全なレモンの方が良いという消費者が増えてきました。そのお陰で、中島でもレモンの栽培が徐々に復活しつつあります。

(格安航空路線)
戦略的な対抗値下げは、航空業界でもみられます。
北海道国際航空(エア・ドゥ)は、1998年に羽田=札幌線の運航を開始しました。しかし、日本航空や全日空は対抗値下げに動き、エア・ドゥの利用者を奪ったことから、経営は悪化し、2002年には民事再生法の適用を申請しました(経営破綻)。現在は、全日空と業務提携を結び、経営再建を進めています。ストレートに言えば、エア・ドゥは全日空の軍門に下ったわけです。全日空は略奪的ダンピングを行ったという感を否めません。

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