経験曲線効果~PPMの大前提~
「経験曲線効果」とは、多く作れば安くできるという効果です。一般に「製品の累積生産量が2倍になると、単位あたりのコストは20%~30%低減する」といわれています。多く作れば安くできるのであれば、シェアが高い企業は、安く作ることができ、その結果、粗利益率が高くなるという結論になります。「経験曲線効果」を前提にするということは、多く作れば安くできるということを前提にするということです。しかし、製品によっては、経験曲線効果がそれほど見られないものもあります。また、生産規模を増加することによって、間接費が増大して、かえって単位あたりのコストが上昇することも考えられます。大企業病の症状の1つです。更に、当初から市場に参入した場合、確かに製品の累積生産量は新規参入企業より多いが、設備が古いため、かえって最新設備を導入した新規参入企業より、単位あたりのコストが増加することはよくあることです。また、そもそも「経験曲線効果」は製造業を前提としており、サービス業では当てはまりにくいといえます。 つまり、現実には「経験曲線効果」の前提が当てはまらないケースがあるということです。
PPMでは、ある企業の強みは、シェアによる低コスト体質であるとされていますが、シェアこそ高くなくても集中戦略によって強い競争力をもつ企業も少なくありません。自動車産業を例にとると、BMW社は、スポーティな高級車に特化する「差別化集中戦略」によって強い競争力を保っています。また、鈴木自動車は、軽・小型自動車に特化した「コスト集中戦略」により、日本と発展途上国市場を中心に強い競争力を保っています。
「プロダクトライフサイクル」の前提が妥当しないのであれば、市場の成長率で事業を分類することも妥当性を欠きます。また、「経験曲線効果」の前提が妥当しないのであれば、マーケットシェアで事業を分類することも妥当性を欠きます。