1.値付けのABC

2010-10-25

それでは、まず、値付けのABCとして、基本的な値付け方法を紹介します。

1.値付けのABC

(3つの視点:マーケティングの3C)

製品がなければ、商売が始めることすらできませんが、折角、商売を始めても価格政策を誤れば、商売は失敗してしまいます。

価格の策定には、大きく分けて、コストがいくらかかるのか(原価の要素)と、いくらなら売れるのか(市場ニーズと競争力の要素)という両方の側面からとらえる必要があります。

言い方を変えれば、

①事業として成り立つ儲けを自社が確保できる価格なのか

②競合他社と比べて優位性を維持できる価格か

③顧客に受け入れられる価格かどうか

という3つの観点から検討することが大切です。

この3つの観点こそ、「マーケティングの3C」です。マーケティングの3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(ライバル)、Company(自社)を指しますが、価格設定においても、3Cが大切なのです。

(ビジネスは戦争というより三角関係の恋愛)企業活動は、戦争によく例えられます。ビジネスマンのことをビジネス戦士などというのは、その例ですね。確かに、企業活動と、戦争はよく似たところがあります。では、企業活動と戦争の違いは何でしょう。

それは、戦争の場合、関係者は、敵の味方の2つですが、企業活動の場合、自社・ライバル・顧客の3つになる点です。企業活動は、自社とライバルで、顧客を奪い合う、むしろ、三角関係の恋愛に似ています。

したがって、戦争の場合は、敵と味方(自分)について知れば、良いわけですが、企業活動の場合、自社とライバルに加えて、顧客についても知らなくてはいけないわけです。

 

①は、コストを上回り、利益を上げることができる価格かどうかということです。この場合、気を付けることは、原材料や外注費、仕入費などの直接的なコストだけでなく、運送費や包装費などの間接的なコストについても十分考慮することです。少なくとも「変動費」は全てカバーするような価格設定を行わないと、売れば売るほど赤字が膨らむという悲惨な結果となってしまいます。(「変動費」は大切な用語なので後で詳述します。)

②と③は、その価格で売れるかどうかということです。例えば、新しく缶コーヒーを商品開発したところ、コスト(変動費)を計算すると1個あたり200円と分かったので、利益を10%乗せて220円という価格を設定したとします。220円で売れれば良いのですが、顧客が高いと感じて売れなければ、商品開発費を回収できなくて大赤字になってしまいます。

仮に、その缶コーヒーには220円払ってもよいと考えても、競合他社が同じような缶コーヒーを120円で販売していたのでは、220円では売れません。したがって、上記の3つの価格を把握しておく必要があるのです。

さて、上記の場合、どのような対応をとれば良いのでしょう。大変難しい問題です。120円と価格設定すれば、売れば売るほど赤字が膨らんでしまいます。220円と価格設定すれば、開発費は全く回収できないおそれがあります。

この場合、220円の意味を考えてみることです。その差が恋人(消費者)に認知してもらえる何かがあるのか。顔がよく家柄もいい、だから恋人は100円自社製品が高くてもかってくれるというなら価格の高低だけで判断する必要はありまえん。ただ肝に銘じておいてほしいのは後での値下げは成功の確率が低いということです。お高い貴婦人として売り出したのに、状況が悪くなると卑屈になって取り入ろうとしている印象を恋人(消費者)に与えてしまうことが多いからです。消費者はそのような企業の行為に不誠実さを感じてしまいます。

220円での価格設定では売れ行きが悪ければ、商品開発などの見直しが必要になります。

例えば、デザインなどを変えて付加価値を高めることも一案です。あるいは、購入方法や製造方法を見直して、コストを下げることも選択肢となります。

価格の設定は事業戦略の要でもあり、その手法も実に数多く存在します。代表的なものとしては、上述の3つと関連して、原価志向価格決定法、需要志向価格決定法、競争志向価格決定法があります。

そこで次に、それぞれの価格決定法についてもう少し詳しく紹介します。

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